ロシア語を打つには、英語のアルファベットとは別の配列を使います。この手引きでは、 ЙЦУКЕН(イツケン)配列の仕組みと、指の置き方、覚える順序を説明します。
ロシア語で使う文字の種類をキリル文字と呼びます。この文字がどこから来たのかを知っておくと、 一つひとつの形に親しみがわいてくるかもしれません。
9世紀、東ローマ帝国の宣教師であったキュリロスとメトディオスの兄弟が、 スラヴの人々に聖書を伝えるため、その言葉を書き表す文字を作りました。 これがグラゴル文字です。
その後、弟子たちがブルガリアで、より書きやすい文字に整えました。 これがキリル文字で、名前は兄キュリロスにちなんでいます。 ギリシャ文字をもとにしているため、似た形の文字がいくつもあります。
| キリル文字 | もとになったギリシャ文字 | 読み方 |
|---|---|---|
| А | Α(アルファ) | ア |
| Р | Ρ(ロー) | エル |
| С | Σ(シグマ) | エス |
| П | Π(パイ) | ペー |
| Ф | Φ(ファイ) | エフ |
Р が「エル」、С が「エス」、 Н が「エン」であるなど、 ラテン文字と形が同じで音が違う文字があります。はじめは戸惑いますが、 ギリシャ文字の系統だと知れば納得がいくところです。
はじめのキリル文字は40以上の文字を持っていました。時代とともに整理が進みます。
現在のロシア語では、こうして33文字に落ち着きました。 キーボードもこの33文字を収めるように作られています。
キリル文字はもちろんロシア語だけのものではありません。ウクライナ語、ブルガリア語、セルビア語、 モンゴル語など、多くの言語でも使われています。言語ごとに文字の数や形が少しずつ異なります。
ロシア語を打つには、パソコンにロシア語入力を追加します。一度追加すれば、 キーを1つ押すだけで切り替えられるようになります。
日本語キーボードにロシア語の刻印はありません。次のいずれかで対応できます。
ロシア語の標準配列をЙЦУКЕНと呼びます。日本語キーボードのアルファベットの並びを QWERTY と呼ぶのと同じで、 最上段の左から6文字を並べた呼び名です。
キーの上の小さな文字は日本語キーボードの刻印、まん中の大きな文字がロシア語、 下がそのキーを打つ指です。 枠が黄色く、下の辺が太いキーがホームポジションです。
キーのいちばん下に、そのキーを打つ指を書いています。 左で始まるものは左手、右で始まるものは右手です。 左手のキーは左の枠が太く、右手のキーは右の枠が太くなっています。
色が出ない環境について。 パソコンやブラウザの設定によっては、上の図の色分けが反映されないことがあります。 ハイコントラスト表示(Windowsの「コントラストテーマ」、Macの「コントラストを上げる」)、 画面の色フィルタやグレースケール表示、配色を上書きするブラウザの設定や拡張機能、 それに白黒での印刷がこれにあたります。 そのときは下の辺が太いキーを目印にしてください。左から ф ы в а で始まる段がホームポジションです。
左手の人差し指から小指をそれぞれ а в ы ф に、 同様に、右手の人差し指から小指を о л д ж に置きます。 日本語キーボードの A S D F と J K L ; の刻印と同じ位置です。
それぞれの指は、ホームポジションから上下の段へ伸ばして、また戻るのが基本です。 下の表は、各指が受け持つ文字の一覧です。
キーボードの上の段から順に並べています。 ホーム の印が付いた文字が、その指の定位置です。
いちどに全部を覚える必要はありません。次の順に広げていくと無理がありません。
ф ы в а о л д ж
この8文字だけで вода(水)、дал(与えた)、лад(調和)といった語が作れます。 指を動かさずに打てるので、まずここで手の形を固めます。
п р
ホームポジションの内側にあるキーです。手首を動かさず、人差し指だけを伸ばします。
й ц у к е н г ш щ з х ъ
е と н は使用頻度が高い文字です。ここを覚えると打てる語が一気に増えます。
я ч с м и т ь б ю
и と т も頻出です。ь(軟音記号)は単独では音を持たず、前の子音をやわらげます。
ё э
端にあるため最後に回します。э は外来語に多く、ё は限られた語に現れます。
大文字は Shift を押しながら打ちます。日本語キーボードでアルファベットを打つときと同じです。
反対の手の Shift を使います。
記号は数字の段にまとまっています。Shift を押しながら打つものが多いので、 どちらの手の Shift を使うかもあわせて覚えてください。
キーの上が Shift なしで出る文字、まん中が Shift を押したときに出る文字、
下がそのキーを打つ指です。
黄色い枠のキーから記号が出ます。
うすく見えているキーは、Shift を押しても大文字になるだけで、記号は出ません。
| まちがえやすい組 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| я / z | 日本語キーボードの Z の刻印のキーが я になる | 左下の端は я と覚え直す |
| ф / a | ホームポジション左端の入れ替わり | 小指の定位置として体で覚える |
| е / т | どちらも頻出で、位置が近い | е は上段、т は下段と区別する |
| ь / б | 形が似ていて隣り合う | ь は棒が短い、と形で覚える |
| ш / щ | щ は ш に尾が付いた形 | щ は ш の右どなり |
| , / . | 同じキーで Shift の有無で変わる | コンマは Shift が要る、と覚える |
5分で構いません。長く続けるより、短い時間でやめておくほうが、また明日も開こうという気になります。 疲れたら無理をしないで途中でやめてください。毎日少しずつ進めることに意義があります。
打てない日があっても、それまでの練習が消えるわけではありません。 忙しくて間があいてしまっても、また始めればいいだけです。タイピング練習は「ゆるく・長く」が上達のコツです。
はじめは配列図を見ても構いませんが、手元は見ないでください。 画面と図だけを見て打つようにすると、指が位置を覚えます。
意味のある文章を打つと、語の区切りやつづりが自然に身につきます。 同じ文章を何度も打つことで、頻出する語や形容詞の語尾など類似の文字列の指の動きがスムーズになります。