指でおぼえる ロシア語キーボード入力の手引き

ЙЦУКЕН配列をはじめて使う方へ
文字の大きさ 20px

ロシア語を打つには、英語のアルファベットとは別の配列を使います。この手引きでは、 ЙЦУКЕН(イツケン)配列の仕組みと、指の置き方、覚える順序を説明します。

1. キリル文字の歩み

ロシア語で使う文字の種類をキリル文字と呼びます。この文字がどこから来たのかを知っておくと、 一つひとつの形に親しみがわいてくるかもしれません。

宣教師兄弟から始まった

9世紀、東ローマ帝国の宣教師であったキュリロスメトディオスの兄弟が、 スラヴの人々に聖書を伝えるため、その言葉を書き表す文字を作りました。 これがグラゴル文字です。

その後、弟子たちがブルガリアで、より書きやすい文字に整えました。 これがキリル文字で、名前は兄キュリロスにちなんでいます。 ギリシャ文字をもとにしているため、似た形の文字がいくつもあります。

キリル文字もとになったギリシャ文字読み方
АΑ(アルファ)
РΡ(ロー)エル
СΣ(シグマ)エス
ПΠ(パイ)ペー
ФΦ(ファイ)エフ

Р が「エル」、С が「エス」、 Н が「エン」であるなど、 ラテン文字と形が同じで音が違う文字があります。はじめは戸惑いますが、 ギリシャ文字の系統だと知れば納得がいくところです。

数を減らしてきた歴史

はじめのキリル文字は40以上の文字を持っていました。時代とともに整理が進みます。

現在のロシア語では、こうして33文字に落ち着きました。 キーボードもこの33文字を収めるように作られています。

いまも広く使われています

キリル文字はもちろんロシア語だけのものではありません。ウクライナ語、ブルガリア語、セルビア語、 モンゴル語など、多くの言語でも使われています。言語ごとに文字の数や形が少しずつ異なります。

キリル文字に慣れていない方は、覚えやすい文字から覚えましょう。 А К М О Т は、形も音もラテン文字とほぼ同じです。 33文字すべてが未知の文字というわけではありません。

2. パソコンの設定を切り替える

ロシア語を打つには、パソコンにロシア語入力を追加します。一度追加すれば、 キーを1つ押すだけで切り替えられるようになります。

Windows

  1. 「設定」→「時刻と言語」→「言語と地域」を開きます
  2. 「言語の追加」からロシア語を選びます
  3. 追加後、WindowsSpace で切り替わります

Mac

  1. 「システム設定」→「キーボード」→「入力ソース」を開きます
  2. 「+」からロシア語を追加します
  3. 追加後、ControlSpace で切り替わります

キーに文字が書いていない場合

日本語キーボードにロシア語の刻印はありません。次のいずれかで対応できます。

3. キーボード配列の全体

ロシア語の標準配列をЙЦУКЕНと呼びます。日本語キーボードのアルファベットの並びを QWERTY と呼ぶのと同じで、 最上段の左から6文字を並べた呼び名です。

キーのの小さな文字は日本語キーボードの刻印、まん中の大きな文字がロシア語、 がそのキーを打つ指です。 枠が黄色く、下の辺が太いキーがホームポジションです。

キーのいちばん下に、そのキーを打つ指を書いています。 で始まるものは左手、で始まるものは右手です。 左手のキーは左の枠が太く、右手のキーは右の枠が太くなっています。

色が出ない環境について。 パソコンやブラウザの設定によっては、上の図の色分けが反映されないことがあります。 ハイコントラスト表示(Windowsの「コントラストテーマ」、Macの「コントラストを上げる」)、 画面の色フィルタやグレースケール表示、配色を上書きするブラウザの設定や拡張機能、 それに白黒での印刷がこれにあたります。 そのときは下の辺が太いキーを目印にしてください。左から ф ы в а で始まる段がホームポジションです。

覚えておきたい特徴

4. ホームポジションと指の分担

左手の人差し指から小指をそれぞれ а в ы ф に、 同様に、右手の人差し指から小指を о л д ж に置きます。 日本語キーボードの A S D FJ K L ; の刻印と同じ位置です。

目印があります。 多くのキーボードでは FJ のキーに小さな突起があります。 ロシア語配列では ао にあたります。 この2つを人差し指で探すことができれば、中指から小指までの指をそれぞれのキーの上に自然に置くことができます。

指ごとの受け持ち

それぞれの指は、ホームポジションから上下の段へ伸ばして、また戻るのが基本です。 下の表は、各指が受け持つ文字の一覧です。

キーボードの上の段から順に並べています。 ホーム の印が付いた文字が、その指の定位置です。

5. 覚える順序

いちどに全部を覚える必要はありません。次の順に広げていくと無理がありません。

第1段階 ホームポジションだけ

ф ы в а  о л д ж

この8文字だけで вода(水)、дал(与えた)、лад(調和)といった語が作れます。 指を動かさずに打てるので、まずここで手の形を固めます。

第2段階 人差し指を横に伸ばす

п  р

ホームポジションの内側にあるキーです。手首を動かさず、人差し指だけを伸ばします。

第3段階 上の段

й ц у к е н  г ш щ з х ъ

ен は使用頻度が高い文字です。ここを覚えると打てる語が一気に増えます。

第4段階 下の段

я ч с м и т  ь б ю

ит も頻出です。ь(軟音記号)は単独では音を持たず、前の子音をやわらげます。

第5段階 残りの文字

ё э

端にあるため最後に回します。э は外来語に多く、ё は限られた語に現れます。

6. 大文字と記号の打ち方

大文字は Shift を押しながら打ちます。日本語キーボードでアルファベットを打つときと同じです。

反対の手の Shift を使います。

記号のキーボード配列

記号は数字の段にまとまっています。Shift を押しながら打つものが多いので、 どちらの手の Shift を使うかもあわせて覚えてください。

キーのが Shift なしで出る文字、まん中が Shift を押したときに出る文字、 がそのキーを打つ指です。
黄色い枠のキーから記号が出ます。 うすく見えているキーは、Shift を押しても大文字になるだけで、記号は出ません。

記号の運指表

ピリオドとコンマは同じキーです。 いちばん右下のキーをそのまま押すとピリオド、Shift を押しながらだとコンマになります。 はじめは戸惑うところです。

7. まちがえやすいキー

ローマ字入力の記憶が邪魔をします。 日本語のローマ字入力に慣れているほど、同じ位置に別の文字があることで混乱が起きます。 これは誰にでも起こることなので、気にせず繰り返してください。
まちがえやすい組理由対策
я / z日本語キーボードの Z の刻印のキーが я になる左下の端は я と覚え直す
ф / aホームポジション左端の入れ替わり小指の定位置として体で覚える
е / тどちらも頻出で、位置が近いе は上段、т は下段と区別する
ь / б形が似ていて隣り合うь は棒が短い、と形で覚える
ш / щщ は ш に尾が付いた形щ は ш の右どなり
, / .同じキーで Shift の有無で変わるコンマは Shift が要る、と覚える

8. 練習のすすめ方

1日5分から

5分で構いません。長く続けるより、短い時間でやめておくほうが、また明日も開こうという気になります。 疲れたら無理をしないで途中でやめてください。毎日少しずつ進めることに意義があります。

打てない日があっても、それまでの練習が消えるわけではありません。 忙しくて間があいてしまっても、また始めればいいだけです。タイピング練習は「ゆるく・長く」が上達のコツです。

見ないで打つ

はじめは配列図を見ても構いませんが、手元は見ないでください。 画面と図だけを見て打つようにすると、指が位置を覚えます。

詩や歌詞を使う

意味のある文章を打つと、語の区切りやつづりが自然に身につきます。 同じ文章を何度も打つことで、頻出する語や形容詞の語尾など類似の文字列の指の動きがスムーズになります。

速さは気にしなくて構いません。 ゆっくりでも、正しい指で打てていれば、それがいちばんの近道です。 間違えたときは、慌てず打ち直してください。